股関節の痛みは、服の着脱がしづらい、乗り物の乗り降りができないなど日常生活に影響を及ぼすことが多くあります。疾患の進行度合いによって、インソール療法やステロイド注射などで痛みの改善を図りながら、リハビリで股関節の可動域を広げたり、筋力向上のための運動を行います。手術や、より詳しい検査が必要な方には対応可能な医療機関をご紹介いたします。
股関節の痛みに関する主な疾患
変形性股関節症
どんな病気?
股関節の変形をきたすことで痛みを生じる病気です。股関節の変形をきたす原因としては、生まれつき股関節の屋根の被りが浅い初育成形成性股関節不全を持っている方に発生することが非常に多いです。他の原因としては、スポーツや怪我で股関節のクッションである関節唇を痛めたことで少しずつ軟骨がすり減ってきたりします。初期症状は、歩き始めの痛みや階段の昇り降りでの痛みが多いです。中には片側だけ症状を認め、脚の長さが違うといった所見を認める方もいらっしゃいます。進行すると股関節の可動域が低下してくるため、日常生活で靴下やズボンの着脱ができない、公共手段や車の乗り降りができないなどの症状を認めます。
治療法は?
初期であれば、股関節への体重のかかり方を調整するために足底板 (当院では特殊な入谷式足底板というものも作成しております)を作って使用していただいたり、痛み止めで観察をします。少し進行すると、股関節周囲にステロイド注射を行うこともあります。股関節の可動域が低下してくると日常生活に大きく支障をきたしてくるため、リハビリで可動域を拡大させる治療を行なうこともあります。
特発性大腿骨頭壊死症
どんな病気?
大腿骨頭の一部が壊死して強い股関節痛を認める病気です。原因は、分からないことが多いので特発性とついておりますが、中にはアルコールの多飲歴やステロイド大量療法などを受けたことがある方に発症します。痛みが強い場合は、脚をつくこともままならず引きずって生活をされている方がよくおられます。確定診断はMRI撮影で行います。
治療法は?
壊死範囲が小さければ、2〜3ヶ月間の安静で次第に軽快してくる方もいます。改善しない方や壊死範囲が大きい方は、手術を選択することが多いです。若い人に発症することもあるため、壊死範囲次第では大腿骨頭回転骨切り術を行うこともありますが、最近は人工関節の性能が大変向上しているため、初めから人工関節を選択することもあります。まずは診断をしっかりとつけることが最も重要ですので、診断がついた後にどの治療を選択していくかについてしっかりと納得してもらえるようにご説明をさせていただきたいと思っております。
大腿骨頭脆弱性軟骨下骨折
どんな病気?
高齢の骨粗鬆症をベースに持つ方が、ちょっとした段差でつまづくなど軽微な外力で大腿骨頭に軟骨下骨折をきたす病気です。骨折なので突然とても強い痛みを認め歩行がしづらくなります。初期はレントゲン像では把握できず、この疾患を疑ってMRIをとることで初めて診断がつくこともあります。中には、骨頭が急激に破壊され、安静にしても耐え難い痛みをきたす特殊な病態に進行することもあります。
治療法は?
大腿骨頭が形を保持し潰れたりしなければ、骨折と同様で2〜3ヶ月間の安静後に症状は次第に軽快していきます。ただし変形を残し、ゆっくりと変形性股関節症に進行していくこともあります。痛みが強く変形が高度に進行した方には、初めから人工関節置換術をお勧めします。人工関節にすることで速やかに歩行が可能となります。もちろん手術においてはリスクもありますので、その点においてはデメリットなどについてもしっかりとご説明した上で、治療が可能な病院にご紹介させていただければと思っております。
大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群
どんな病気?
歩いているときや股関節を曲げたり捻ったりするときに、股関節に痛みを生じる病気です。股関節は、屋根側の寛骨臼と、そこにはまり込むように存在する球体の大腿骨頭で構成されています。骨と骨だけでは不安定な運動となるため、そうならないように寛骨臼側に大腿骨頭に吸着するような形の関節唇という組織が存在することで安定して股関節の可動ができるようになっています。この関節唇に何かしらの軽微な外力や繰り返しの刺激で損傷が起きると、股関節の痛みが出現します。関節唇の損傷が起きる原因としては、若い時のスポーツなどが原因で寛骨臼側が尖ってきたり、大腿骨頚部が厚みを増すことで、骨と骨が衝突しやすい環境ができあがり、そこに挟まった関節唇が損傷すると考えられます。診断はエコーやMRIを用いて行います。
治療法は?
まずは痛みの出やすい動きを控えてもらいます。その上で、鎮痛剤を用いたり、エコーを用いて関節唇や関節内にステロイドと局所麻酔を混ぜた薬液を注射したりします。急激な炎症による痛みはこの注射で取り除けることが多いです。その上で、原因となる骨と骨の衝突を発生させにくくするため、関節を柔らかくしたり、必要な筋肉を鍛えたりするなどのリハビリでを行いたいと思っております。中には損傷した関節唇を縫合したり、衝突する骨を削る治療などを行うこともありますが、その場合は、いずれもしっかりとした保存療法を行なった上で、改善が認められずに困っているときにご相談をさせていただきます。まずは、股関節の痛みがあり、もしかしたらと思ったら受診をしてみてください。そうすれば原因を特定し、早く痛みの改善につなげることができるかもしれません。