腰の痛みは、突然くるものから、骨の変形が原因のもの、脊髄圧迫による神経痛をきたすものまで、症状や疾患もさまざまです。下半身のしびれ、ジンジンした痛み、電気が走るような痛み、背中の痛みなどがありましたら、ご相談ください。
強い痛みには、ハイドロリリースと呼ばれる注射療法で痛みを取り除くことが可能です。治療の選択肢によっては、医療機関と連携を取り、ご紹介をさせていただきます。
腰の痛みに関する主な疾患
急性腰痛症
どんな病気?
いわゆるぎっくり腰で、突然腰に激痛を生じる疾患です。歯磨き・顔を洗うなど前屈みになったとき、ソファから立ちあがろうとしたら、など予期しないタイミングで起こります。経験のある方も多いと思われますが、その痛みはとてつもなく強く、どうやって座ったり立ったりしていいかも分からなくなります。
治療法は?
これまでの治療では、コルセットをつけてもらったり、痛みどめや湿布、それだけでは我慢ができない痛みのある方には、仙骨裂肛ブロックという麻酔を行ってきました。しかし、最近その病態が少しずつ解明されてきており、一つの病態ではなく、腰部の筋肉や靭帯、そして関節周りの異常が合わさって起こっていると言われています。当院では、急性腰痛症に対して、強い痛みをなんとか軽くしたいというご希望がある方には、ハイドロリリースを施行したいと考えています。先に述べた腰部の筋膜間や靭帯、関節包周囲に薬液を投与することでたちまち痛みが軽減する可能性があります。注射自体は決して痛みがないわけではありませんが、激痛を軽減するためにがんばれるという方には、必要があれば検討させていただきたいです。
変形性腰椎症
どんな病気?
腰の変形を認めている状態です。レントゲンで腰椎の具合を確認し、骨の並びにずれを生じていたり、骨と骨の間の隙間が狭くなっていると変形性腰椎症と判断します。あくまで変形があるという事に対しての病名であり、その症状は様々です。下記に述べる腰部脊柱管狭窄症であったり、腰椎椎間板ヘルニアなども変形性腰椎症の中の疾患となります。腰痛がある方や脚の痺れや痛みなどがある方にはこの腰椎の変形があるかもしれません。変形があるから悪いとは限りませんので、まずは症状をお聞かせください。
治療法は?
先にも述べましたが、変形があっても必ず治療が必要な訳ではありません。あくまで腰椎の変形を認め、かつ今ある自覚症状(坐骨神経痛など)が変形した腰椎の位置と一致していれば治療を行っていくことになります。症状が軽ければ内服のみであったり、リハビリの導入、自宅でのストレッチなどの指導が中心になると思います。中にはブロック注射や手術を要するような症状が隠れていることもあるかもしれませんが、まずはしっかりと症状を把握させていただき、必要な検査や治療を一緒に考えさせていただければと思っております。
腰部脊柱管狭窄症
どんな病気?
腰椎の中を通る脊髄がヘルニアや肥厚した靭帯により脊柱管内を通る脊髄が圧迫されて神経症状をきたす病気です。真ん中が強く圧迫されると脊髄症状として脚の重だるさ、麻痺、間欠性跛行(途中で休まないと100メートルも歩けない)、膀胱直腸障害(尿もれ、便意消失、便失禁)などをきたします。脊髄が枝分かれして椎間孔を出ていくところで圧迫を受けると坐骨神経痛をきたします。坐骨神経痛は、臀部・大腿・下腿・足部のジンジンした痛み、電気が走るような痛みとして表現されることが多いです。
治療法は?
腰椎椎間板ヘルニアによるもので、麻痺があればすぐに手術を検討することもあります。しかし通常は、加齢に伴い腰椎やその周囲の変形が蓄積して緩徐に発症することが多く、その場合は、原因が特定でき、いよいよ症状を我慢するのが限界だとなった場合に、よくよく相談した上で、手術が可能な病院へご紹介させていただきます。必ず手術になるわけではなく、まだ程度が軽度~中等度の時には内服やリハビリを行い、できるだけ症状が軽減されるよう頑張らせていただきたいとも思っています。
腰椎椎間板ヘルニア
どんな病気?
繰り返しの前屈みや重たいものなどを持った際などに背骨の骨と骨の間にあるクッション(椎間板)が繊維輪を裂いて外に飛び出すことで神経(脊髄)を圧迫して生じる腰痛や脚の痺れです。前屈みで症状が増悪します。
治療法は?
腰痛にはロキソニンなどの鎮痛剤、脚の痺れには末梢神経障害性疼痛に対するお薬(プレガバリンやタリージェなど)を使用します。内服で痛みが取れない方には、当院ではできない治療ですが、神経根ブロックや手術でのヘルニア摘出、(適応の詳細は専門医に聞いていただかないといけませんが)生涯一度の治療として行えるヘルニア部への注射などがあります。しかし半年ほど辛い思いはしますが、80%ほどの方は自然に症状軽快し、ヘルニアの縮小も期待できます。そのため、発症当時は痛みが辛く不安な日々が続くこともあるかもしれませんが、まずは信じて保存治療を試してみられたらどうでしょうか。当院では、内服の調整を行いながら経過をしっかり観察させていただきたい思っております。もし改善がない場合の治療については、よくご相談した上で専門医へのご紹介の検討もさせていただきます。
化膿性脊椎炎、腸腰筋膿瘍
どんな病気?
じっとしていても強い腰痛や背部の痛みを認め、中には脚を伸ばして安静に寝ることすらできないくらいの痛みを認めることもある病気です。肺炎や尿路感染症などから血流を介して背骨(脊椎)やその周りの筋肉(腸腰筋)などに細菌が定着し感染を起こしたり、以前の背骨の手術後何年も経過して発症したり、その原因と発症様式は多彩です。診断はMRIが一番です。MRIを撮影すると背骨の骨(椎体)の間に炎症を認めます。進行した場合は骨を一部溶かしていることもあります。
治療法は?
入院下での強力な抗生剤治療が必要となります。予防方法はありませんが、糖尿病などがあると感染しやすい傾向にあるため原疾患のコントロールが重要となります。当院で発見することは珍しいかもしれませんが、発見した際には入院してしっかりと抗生剤治療を行なっていただける病院を見つけて、ご紹介までできるように手配させていただきます。