肘が外れてしまった、肘が痛い、手がしびれている、曲げると痛いなどの症状はありませんか?
肘の痛みは、小さなお子さんにもよく起こる症状です。また、仕事やスポーツで日常的に使う方にもとても多く見られる疾患でもあります。ステロイド注射や理学療法士によるリハビリなどで痛みを改善させる治療を行います。痛みが治らない場合は、骨折していないかを検査で診断することが大切です。
肘の痛みに関する主な疾患
肘内障
どんな病気?
肘が外れる、外れかかるケガです。2歳から7歳にかけて多く、転倒しそうになったお子さんの手を急に引っ張ったり、お子さん自身が転倒して手をついたりした時に突然発症します。肘を痛がったり、腕をだらんとさせて大声で泣き始めるため、親御さんたちはどうしたらいいものかとアタフタされます。とてもとても多い疾患です。
治療法は?
どのようにして痛めたかが分かれば診断はほぼ確定し、後は腕をクリクリと回せば一瞬で整復ができてしまいます。整復後は、余韻が残るお子さんもいらっしゃいますが、多くの子は何事もなかったかのようにけろっと泣き止み腕を動かし始めてくれます。肘内障は癖になりますか、と、特に何度も繰り返し発症したお子さんを持つ親御さんから質問されますが、好発年齢を過ぎれば、骨や靭帯が成熟するため自然と発症することは無くなります。
まれにエピソードが不明で、肘を同じように痛がり、あまり腫れや変形がなかったため整復操作を行ったが治らない、といったことがあります。その時は、レントゲンを撮影させていただきます。なぜなら骨折をしていることがあるからです。骨折していた場合は、その形態にもよりますが、まずギプスやシーネ固定を行います。そして、骨折に伴うずれが大きい時や、変形を残すと困る部位の骨折では、専門的に手術を行うことができる病院をご紹介をさせていただきます。
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
どんな病気?
肘の外側に痛みを生じる疾患です。前腕~指にかけてのしびれを一緒に認めることもあります。パソコン業務、飲食業、スポーツなどで、日常的に繰り返し腕 (手関節を背屈した状態)を酷使する方に発症します。重量物をかかえる業務で発症した方は、非常に難治性のことがあります。上腕骨外側上顆炎は、外来で拝見する疾患の中でとても多い印象です。
治療法は?
保存的治療
軽い初期症状で受診をされた場合は、負荷のかかっている筋肉の付着部を休ませるための(テニス肘)バンドを装着いただき、患部(肘外側部)が休まっている間に湿布を貼ってもらったり、ストレッチをしてもらったりして除痛を図っていました。
しかし、上記のような教科書的な治療では治せない人たちにもよく遭遇します。その際によく使用されるのが、肘外側上顆部へのステロイド注射です。
ステロイド注射は、疼痛を改善させる効果は非常に高い反面、腕の使いすぎにより痛みが出ることになった根本的な腕の使用法が改善できていなければ、ほぼ必ず再発します。そのため、しばらく間隔(3ヶ月ほど)をあけて再度ステロイド注射を行っていました。
観血的治療
ステロイド注射を数回繰り返しても改善がない難治性の外側上顆炎の場合には、上肢の専門外科医を紹介とさせていただき、手術をご提案としていました。その場合は、術後リハビリが大変で、日常の生活に復帰できるまでに3ヶ月ほどを要します。そのため、判断は慎重に行いたいと考えますし、よくご相談してから決めたいと考えております。
開業してから、外側上顆炎の患者様が非常に多いことに気づき、再度最近の治療について文献やセミナーなどで知識を整理してみました。すると、今までの治療よりたくさん良い治療法が存在しました。
プロロセラピー
こちらは、高濃度ブドウ糖を外側上顆部に局所注射する手技です。この治療は超音波画像を確認しながら外側上顆部に付着した伸筋群共同腱に対して傷んだ部位に正確に薬液を注入します。注入部には、自己免疫反応が起きることを利用して治癒を図ります。平均注射回数は2回で、注射後は平均2日ほど痛みが一過性に増悪し、その後疼痛が一気にひいていきます。自己免疫を誘発させるのが目的なため、注射後は湿布やロキソニン、アイシングなどは禁止となります。この治療を開始してからは難治性の外側上顆炎の方々も、治療前と比較するとかなりの疼痛軽減を得てもらっています。
動注治療
こちらは
へバーデン結節の治療項目でも述べましたが、
オクノクリニック奥野先生にて開発された手技です。
自由診療とはなりますが、炎症を起こした部位には滑膜炎により異常血管が発達しており、その異常血管を腕の動脈から塞栓物質を流すことで塞栓し炎症活動を抑え込んでしまうという手技です。整形外科では今まで考えられたことのなかった手技ですが、こちらもかなり高い鎮痛効果が得られる手技として現在とても流行中です。当院でも、
オクノクリニックと正式にライセンス契約を交わしておりますので、ご希望があればいつでも実施できる状態です。
PRP
当院では、PDF-FD(Plasma Derived Factors Freeze-dry)を用いており、PRPからさらに成長因子を濃縮・抽出し、フリーズドライ加工をしたものを、外側上顆部に注射にて注入する方法です。文献的な調べでは、このPDF-FDが長期的な改善度合いにおいては群を抜いて効果が高いという結果でした。PDF-FDは、自由診療となるためお値段は非常に張りますが、その分効果も申し分ないようです。あくまで保険診療では改善が得られず長年悩んでいる時の最後の選択肢という位置付けで捉えておくといいのではないかと思っております。
治療の選択肢が多いのはいいことだと私は考えておりまして、もちろん最初は保険診療内の治療を精一杯させていただいた上で、どうしても改善が得られにくい場合は、症状に合わせて自由診療もご案内させていただければと思っています。
上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)
どんな病気?
肘の内側に痛みを生じる疾患です。上腕骨外側上顆炎と同様で、日常的に繰り返し腕 (手関節を背屈した状態)を酷使する方に発症します。
治療法は?
保存的治療
上腕骨外側上顆炎と同様に、負荷のかかっている筋肉の付着部を休ませるためのバンドを処方したりしますが、外側上顆炎と異なり尺骨神経が付近を走行しているため、圧迫により小指のしびれをきたす可能性があり積極的には使用しておりません。また当然ながら、患部に湿布を貼ってもらったり、ストレッチをしてもらうことなどお願いしています。
ただしこちらも外側上顆炎の治療と同じで最近は治療法が少し異なるようです。
プロロセラピー
こちらは、高濃度ブドウ糖を内側上顆部に局所注射する手技です。この治療は超音波画像を確認しながら内側上顆部に付着した屈筋群共同腱に対して傷んだ部位に正確に薬液を注入します。注入部には、自己免疫反応が起きることを利用して治癒を図ります。平均注射回数は2回で、注射後は平均2日ほど痛みが一過性に増悪し、その後疼痛が一気にひいていきます。自己免疫を誘発させるのが目的なため、注射後は湿布やロキソニン、アイシングなどは禁止となります。この治療を開始してからは難治性の外側上顆炎の方々も、治療前と比較するとかなりの疼痛軽減を得てもらっています。
動注治療
こちらは
へバーデン結節の治療項目でも述べましたが、
オクノクリニック奥野先生にて開発された手技です。
自由診療とはなりますが、炎症を起こした部位には滑膜炎により異常血管が発達しており、その異常血管を腕の動脈から塞栓物質を流すことで塞栓し炎症活動を抑え込んでしまうという手技です。整形外科では今まで考えられたことのなかった手技ですが、こちらもかなり高い鎮痛効果が得られる手技として現在とても流行中です。当院でも、
オクノクリニックと正式にライセンス契約を交わしておりますので、ご希望があればいつでも実施できる状態です。
PRP
当院では、PDF-FD(Plasma Derived Factors Freeze-dry)を用いており、PRPからさらに成長因子を濃縮・抽出し、フリーズドライ加工をしたものを、外側上顆部に注射にて注入する方法です。文献的な調べでは、このPDF-FDが長期的な改善度合いにおいては群を抜いて効果が高いという結果でした。PDF-FDは、自由診療となるためお値段は非常に張りますが、その分効果も申し分ないようです。あくまで保険診療では改善が得られず長年悩んでいる時の最後の選択肢という位置付けで捉えておくといいのではないかと思っております。
治療の選択肢が多いのはいいことだと私は考えておりまして、もちろん最初は保険診療内の治療を精一杯させていただいた上で、どうしても改善が得られにくい場合は、症状に合わせて自由診療もご案内させていただければと思っています。
肘部管症候群
どんな病気?
「小指や薬指だけがしびれる」「細かい動作がしづらい」そんな症状として受診され診断に至ることが多い疾患です。この疾患は、肘の内側を通る“尺骨神経”が圧迫されることで起こる神経障害です。
肘の内側には「肘部管(ちゅうぶかん)」と呼ばれる細いトンネルがあり、その中を神経が通っています。長年の肘の曲げ伸ばし動作や加齢による変化、ガングリオンや骨の出っ張りなどが原因で、このトンネル部分が狭くなり、神経が圧迫されてしまうのです。
治療法は?
当院では原因箇所が特定できた場合、ハイドロリリースをオススメしております。
尺骨神経障害では、肘関節の上でStruther’s archade(ストラザーズアーケード)部で圧迫されている場合、狭義の肘部管で圧迫されている場合、Osborne(オズボーン)靭帯で圧迫されている場合などがあり、圧痛点をしっかりと確認した上で超音波でさらに確認します。痛みの部位が同定されたら、ハイドロリリースをその疼痛部位に施行します。施行直後からきちんと原因箇所が一致していたら症状の改善が得られます。
ただし、肘部管に関しては手術による直接的な除圧術が必要になる可能性もあります。また、頸椎レベルでの神経根の圧迫による場合もあり、その場合は頸椎のMRI撮影をお願いすることもあります。
まずは小指が痺れる、指が閉じにくいなどの症状があれば診察をさせてください。もしかしたら、その症状を改善できるかもしれません。