首の疾患
首の疾患
首が痛い、首がまわらない、頭痛がする、慢性的に首が凝っている、上肢が痛む、手が痺れるなどの症状でお悩みではありませんか?
首の痛みには、肩こりからくるもの、神経の圧迫などさまざまな原因や疾患が隠れていることがあります。適切な検査と診断が重要となります。

首の痛みに関する主な疾患

寝違え

どんな病気?

朝起きた時に感じる急な首の痛みです。寝ている枕が合っていなかったり、下を向いての作業が続いていたり、原因ははっきりとわかりませんが、首の後ろから肩にかけての痛み、痛い方向に首が回せないなどの症状が出ます。

治療法は?

レントゲンなどの画像検査では特に異常が指摘できない疾患です。以前は、圧痛部位にトリガーポイント注射(麻酔薬の筋肉注射)を行っておりましたが、最近は、エコーを併用して筋肉の異常を探し正確に注射を行うハイドロリリース(筋膜リリース)を行っています。これを行うことで、痛みが大きく軽減することが期待できます。

ムチウチ

どんな病気?

主に交通事故で後ろからや横から追突されて受傷した際に発症することが多い首の痛みです。寝違えと似たような疾患になりますが、ひどい場合は、吐き気、頭痛、痺れ、倦怠感など不定愁訴と位置付けられる症状を合併することもあります。首は可動性に富む部位です。人体としては決して強い部位ではありません。そんな頚部に急な強い衝撃を受けると、その衝撃を関節や首周りの筋肉が一手に担うことになり不調や損傷が生じます。

治療法は?

一般的には、すぐに病院を受診し、レントゲンやCT検査、2週間ほどで治らない時はMRI、頭痛がひどい場合は髄液検査などの精密検査が行われます。しかし、大抵ははっきりとした原因がわからず、内服や物理療法、リハビリなどをその時の状況に合わせて数ヶ月行うことで次第に回復していきます。
当院では、さらにエコー検査を用いて圧痛部位をしっかりと確認します。すると多くの場合で、精密検査では異常と診断されなかった痛んでいる筋肉や関節が見つかります。そして異常部が見つかれば、そこに治療としてハイドロリリースを施行することができます。治療が奏功すれば、今まで全く振り向けなかった方向に首を回すことができるようになったり、効果がすぐに実感でき、かつ回復を早めることができます。しかし事故の場合は、損傷の程度や範囲が多岐にわたるため、すぐには症状の改善ができないことも多いでしょう。実際に回復の実感を得るまでには複数回施行を重ねる必要があります。
今まで通院していた病院で、治療はなく時間が経てば治るとだけ言われている、治療を続けているがあまり効果が感じられない、どこも悪いところはないと言われてあまり相手にされていないように感じる、など、悩みのなかなか解決しない方は一度当院で診せていただけないでしょうか。微力ながら、そのような症状を改善できるお手伝いができるかもしれません。

変形性頚椎症

どんな病気?

時間をかけてゆっくりと進行した頚部の関節の変形です。変形はさまざまな原因の蓄積で起こりますが、進行防止はできても元に戻ることはありません。そのため、レントゲンなどで変形性頚椎症を認め、変形に伴う痛みがある際は、更なる進行した病態である頸髄症や頚椎症性神経根症などがおきないように、予防がとても大事になります。そのため、自分でもできる体操などをリハビリで行う必要があります。

治療法は?

まずはどの程度の変形が現時点で存在しているかの評価が一番大事です。軽度変形であれば、まだ神経症状など自覚症状がないことが多く、首回りのストレッチングや一時的な頚椎カラーでの安静などの手段をとります。中等度変形で上肢のしびれが出ている場合は、神経痛に対する薬の内服と、状況に応じて必要なリハビリを開始します。高度変形では、下肢のふらつき症状など重篤な症状が出ている可能性があり、手術が適応となる場合があります。程度の判断は、画像評価を行った後にきちんとご説明をいたしますので、一緒に考えていけたらと思っております。

頚椎椎間板ヘルニア

どんな病気?

首の骨と骨の間のクッションが背骨の中の空間(脊柱管)に飛び出して首の痛みや腕の痺れをきたす病気です。原因は、下を向いての作業が長い、頭や首に強い衝撃を受けた、加齢など様々で、これといった原因がわからないこともあります。首を後ろに反ると腕の痺れが強くなることが多いです。ヘルニアの診断にはMRIが必須となりますので、当院ではMRIが撮影可能な病院をご紹介し、撮影をお願いすることになります。

治療法は?

基本的には頸部の安静を図ることが大事で、鎮痛剤を使いながら、下を向くなどの原因となる動作を避けるようにお願いします。80%程度の人が3〜6ヶ月で症状が軽快します。ヘルニア自体が消失するわけではありません。いつまでも痛みが取れない方や痛みが悪化する方には、根本的な治療や専門的な治療が可能な病院へのご紹介を相談をさせていただくことがあります。

頚椎症性神経根症

どんな病気?

主に腕の痺れ(ジンジンした痛み)を認めます。疾患としては、先に述べた頚椎椎間板ヘルニアや加齢に伴う脊柱管狭窄症によって起こります。

治療法は?

頚椎椎間板ヘルニアと同様で、まずは鎮痛剤を使用します。鎮痛剤は、神経痛に特化したものを使用します。少し使用に注意が必要なお薬で、最初は少量から開始し徐々に副作用(多いのは眠気・ふらつき)の発現の有無を確認しながら、1〜2週おきに投与量を増やしていきます。この神経痛治療薬だけでは疼痛軽減効果が弱い方には、ロキソニンやカロナールなどの鎮痛剤の追加を検討します。内服だけでは痛みが取れない方にはリハビリの追加も検討します。内服やリハビリを行って3ヶ月程度経過しても改善の兆しがないときには、専門的に治療が可能な病院での治療を相談をさせていただくことがあります。

頸髄症

どんな病気?

首の神経が圧迫される病気です。圧迫される神経は脳からつながる脊髄(中枢神経)です。症状は、両手の使いにくさ(字が描きづらい、握れずものを落とす)、脚がふらついて真っ直ぐ歩けない、階段が怖くて降りることができない、などです。脳梗塞や脳出血とは異なり、両脚や両手に症状を認めることが多いです。

治療法は?

頸髄症はゆっくりと進行する病気です。加齢に伴う頚椎の変形などに合わせて少しずつ進行します。内服やリハビリでの治療はなかなか効果的なものがないため、MRIでの適切な診断を行い、症状の進行具合や日常生活への弊害の程度を診て、適切な時期に手術が可能な病院を受診していただくようご相談をさせていただくことになります。

頸髄損傷

どんな病気?

交通事故など、頭や首にとても強い衝撃が加わった時におこる、腕から下の麻痺です。頚椎の脊柱管内が既に狭くなる原因を持っている方は、頭を軽く打っただけでも同様の麻痺をきたすことがあります。基本的には救急疾患で、急性期に当院に来られる方はほとんどいないと思います。慢性期の方に、当院でリハビリの介入を行うことは可能です。

治療法は?

症状によって様々です。重症の場合は、自分で呼吸ができなくなり気管挿管やICU管理をされます。中等症の場合は、自力で呼吸は可能でも両側上下肢は麻痺しており、自力での食事や移動ができないため、長期間のリハビリ入院を要することになります。中には補助具の併用で、ある程度の生活機能を回復できる方もいます。同じ頸髄損傷でも、中心性頸髄損傷といい、両肩~手にかけての激痛をを認める場合があります。こちらは、脚の麻痺がないため自宅での生活が可能になることも多いですが、痛みに対して長期的に内服薬の調整を行なっていく必要性があります。どの種類でも頸髄損傷は、発症した時点で著しく生活を妨げられることになります。元々もっている頚椎の病変の有無で予後が変わることもあるため、腕や脚が痺れるなどの症状がある方は、そういった意味でもあらかじめ頚椎に病変がないか調べるお手伝いをさせてください。

環軸椎回旋位固定

どんな病気?

主に子どもにおきる首の疾患です。風邪などをきっかけに、ある日突然、朝起きたら頭が傾いていて、自分では戻すことができず、首を痛がったりします。しばらく様子を見ていても治らないと病院を受診されることが多いです。病態は、頚椎の1番と2番が正常の配置とは異なる回旋で固定されてしまうことが原因です。

治療法は?

頚椎カラーを着用できる年齢の子であれば、装着して自宅でなるべく横になっていてもらいます。他には牽引治療があります。これは入院して行います。ベッドに安静にした上で顎にベルトをつけて牽引を行う治療です。私は経験がありませんが、稀に再発性の症例では手術を要すると教科書上は記載されています。後遺症を残すことはほとんどない疾患のため、あまり心配をされないでください。