骨折やケガについて
ケガをしたことがない人はほとんどいないのではないでしょうか。ケガを予防することはとっても難しく、ふとしたときに「あっ、やってしまった。」という具合に瞬間的にケガをするのがほとんどだと思われます。
  • 足を捻って腫れてきた
  • 手をぶつけた、挟んだ
  • こけて肩を打って上がらない
  • 事故に遭ってしまう
  • 物が落ちてきて痛めた
  • ハサミや包丁で指を切ってしまった
など少し想像するだけでも、いくらでもケガをする可能性は日常に潜んでいます。
骨折やケガについて
中には、高エネルギー外傷(激しい事故や転落など)といい生身で受けたら骨がバラバラになってしまうような骨折であったり、骨粗しょう症があるために少し重たいものを持っただけで背骨を骨折してしまったり、脱臼といい関節から骨が外れてしまう激痛をきたす疾患など、恐ろしい外傷もたくさんあります。
以下に列挙した骨折は、全骨折の中のごく一部です。
早めに発見してきちんとした固定をすれば、手術まで至らずに治る骨折もたくさんあります。反対に、いつか治ると思って放置すると、いつまでも治らず、手術が必要な骨折が隠れていたりすることもあります。
ケガの診断はとても難しいです。私たち医師でもレントゲン撮影で写るような骨折はすぐにわかりますが、検査では何もないけど痛みが続きますといったケガは診断に難渋します。そのため、受診をしてもらう事でまずはどういったケガなのかを確認し、固定が必要なら固定を行い、さらに詳しく調べるための検査を行ってもらったりして、できるだけもとに近い状態に治していけるように、あなた自身へのチャンスを与えてあげてください。
大切なことは、どうしたらいいんだろうと悩んだ時、思いきって相談してみようという気持ちを持っていただくことです。可能な限り丁寧に説明し方針をたてさせていただくので、回復のお手伝いをさせてください。

代表的な骨折の種類

腰椎圧迫骨折

どんな骨折?

背骨の骨折です。骨粗鬆症の方にもっとも発生率が高いと考えられます。尻もちをつく、背中を打つことで発症することが多いですが、なかには重たい荷物を持つだけで発症することもあります。

治療法は?

コルセットを作製、2〜3ヶ月ほど装着してもらうことで治癒することが多いです。しかし、時には手術を要する複雑な折れ方をしたり、長く痛みが残り、手術にいたる方もおられます。不安はあると思いますが、手術が必要な時は、より高度な治療が可能な病院にご紹介します。きちんと治るように、最後までお力添えをさせていただきます。

大腿骨近位部骨折

どんな骨折?

脚の付け根の骨折です。骨粗鬆症の方に発生しやすく、全骨折で2番目に多い骨折です。転倒した際に発症することが多く、とてもとても強い痛みで、通常は骨折した瞬間から動くことができません。

治療法は?

痛み止めなどで様子を見ても治ることはあまり期待できず、基本的には手術が望ましいと考えられています。我慢して寝たきり期間が長くなることで、将来的に歩くことができなくなるかもしれないからです。 痛みに耐えてなんとか当院まで来ていただいた方には、その先の治療ができる施設のご紹介まで、流れをしっかりと作らせていただきたいと思います。

脆弱性骨盤骨折

どんな骨折?

お尻や腰の骨折です。これも骨粗鬆症の方に発生する骨折で、尻もちをついたりすることで発症します。骨粗鬆症の方は頻度的に大腿骨近位部骨折が多いため、レントゲンなどではっきりとした大腿骨の骨折がない時に鑑別にあがり、場合によってはCTやMRIまで撮影してようやく見つかることがあります。

治療法は?

痛みはかなり強いですが、手術に至る症例は多くはありません。また、手術は非常に専門的で適応の判断が難しいため、治療可能な施設が限られます。 基本的には、痛み止めを使いながら筋力を落とさない様に歩行練習を開始していく流れとなります。痛みが半減するまでに3週間ほど、痛みが軽くなるまでには2ヶ月ほどを要します。 当院で発見した際には、痛みに応じて痛み止めで経過を見るか、入院先を探すか判断させていただきます。歩行訓練は当院でしっかり行うことができます。

橈骨遠位端骨折

どんな骨折?

手首の骨折です。転倒して手をついたら発生する、骨折の中で最も多い症例です。スポーツをする小児でも、「橈骨遠位骨端線損傷」と名称は異なりますが、同じような損傷を認めることがあり、やはりこちらも非常に多い骨折です。

治療法は?

小児の場合

小児の場合は、手術を要する症例もありますが、多くは固定により治癒が得られます。固定する際は、局所麻酔を使用して徒手整復(手を用いて骨を正常に近い位置に戻すこと)を行った後に、シーネやギプスで固定します。骨折部のずれが少ない安定型の骨折であれば、固定することで、少しの変形は残ることがありますが、手関節の可動域低下をほとんどきたすことなく治癒が期待できます。

大人の場合

あくまで、院長の経験上になりますが、手術を要することが非常に多いです。しかし適切な手術を行えば、わずかな可動域低下は認めるものの、かなり綺麗に治癒が得られます。治療の判断には、完全に近い状態で治すか、早く日常生活に復帰したいか、痛いことが怖くて何もしたくないか、など個々のニーズに合わせて、可能な限り負担の少ない治療を選択するように、当院では患者様としっかりコミュニケーションをとりながら対応させていただきます。

上腕骨近位端骨折

どんな骨折?

肩の骨折です。転倒して肩を強く打ったら発生する骨折で、割合はとても多いです。

治療法は?

上腕骨近位端骨折は、高齢の方には手術を行うこと自体が負担になるため、一部の骨折形式では痛みを圧してでも強化リハビリを行うことで早く骨をくっつける方法を選択することがあります。しかしずれ方によっては、手術をしないと治せないことも多くあります。他、例えば骨折自体は手術適応であっても、脳梗塞で麻痺がある側を骨折されていて、手術での機能回復が見込めず、外観を治すためだけの治療になってしまうような場合は、患者様の負担になるだけだと、手術を行わない判断をすることもあります。治療法の判断には専門的な知識を要するため、ぜひ一緒に考えて一番納得のいく治療を選択していくことにお力添えができればと考えています。

足関節外果および内果骨折

どんな骨折?

足首の骨折です。足関節の骨折として非常に多い疾患です。足を挫いて発症する骨折で、捻挫(靭帯損傷)では止まることができず、更なる力が加わることで発生します。

治療法は?

以前は、骨折部が1ヶ所であればギプス固定で1ヶ月ほど固定し、その後サポーターに切り替えて3ヶ月ほどで完治を目指すことが多い印象でした。最近は、骨折に合わせた適切な手術による固定(プレートやスクリュー)を行うことが増えています。手術を要する骨折かどうかは、レントゲン画像やエコー検査である程度しっかりとした骨折形態が把握できますので、検査結果と個々のご希望との兼ね合いで、最もご本人にあった治療をご提案できればと考えています。骨折治癒後に行うリハビリについても、当院では大きなお力添えができると思います。

肘関節内骨折

肘の骨折です。大人と小児で頻度の多い疾患が異なります。

小児の場合

頻度の多い骨折

上腕骨遠位骨端線損傷 (顆上、外側顆、内側上顆)

どんな骨折?

小児の場合、成長軟骨線である骨端線の部分が力学的に弱いため、骨端線を境に一部骨を巻き込んで折れることがあります。そのことを、骨端腺損傷と呼びます。

治療法は?

ズレが小さい場合は、徒手整復を行った状態でシーネやギプス固定を行います。1週間後にレントゲンチェックを行なってズレが生じていなければそのまま治癒します。期間も大人の半分程度の4週程度でほぼ治ってきますが、完治とは異なるのでその辺りはしっかりとご説明します。
ズレが大きい場合は、痛みが軽減するようにまずシーネ固定を行った上で、比較的早期に手術対応が可能な病院にご紹介となります。プレートなど頑丈な固定を行うことはほとんどなく、1〜2mm程度の鋼線で固定をすることがほとんどです。そのため傷も小さいことが多いです。手術後は、ズレが小さい場合と同様に4週程度シーネ固定を行えば骨ができてきます。そのタイミングで金属を抜釘することが多いです。ピンは体外に出すことが多いので、週に1〜2回ほど消毒を行う必要があります。
症例に合ったきちんとした治療ができれば、肘の変形をきたすことなくきれいに治癒することが見込めます。お子様のことですから、ご両親も大変心配されることでしょう。当院では、実際に小児の骨接合をたくさん行ってきた経験をもとに、安心納得できるまで最善の治療をご提案できるよう、しっかり説明を行なっていきたいと思っています。

大人の場合

頻度の多い骨折

肘頭骨折、上腕骨遠位端骨折、脱臼を伴う骨折

どんな骨折?

大人の場合、骨粗鬆症の方に発生しやすいのが、肘頭骨折や上腕骨遠位端骨折です。また、交通事故やスノーボードなどで激しい転倒をし、手をついた際に発生するのが脱臼骨折です。

治療法は?

保存治療になることは少なく、手術を要することがほとんどです。手術の難しさも様々で、治癒しやすい簡単な症例から、とても難しく、頑張って治療をしても、残念ながら機能障害を残してしまう症例などがあります。プレートやアンカー(靭帯を修復する際に使用するピン)などを駆使して治療を行うため、言葉では説明し難い部分もありますが、当院でこれらの骨折を確認した際には、どの治療法が適切なのか、患者様にとってのベストを考えながらご提案していきたいと考えています。

マレット指

どんな骨折?

”つき指”での骨折です。ケガした瞬間は、あまりの痛さに困惑しますが、少し経つと痛みが引いてくることから様子をみよう、となることが多いと思います。しかし、つき指は時々骨折(骨性マレット)や伸筋腱損傷(腱性マレット)をきたしていることがあります。診断はレントゲン撮影が一番です。つき指くらいで受診は…と思わずに一度診察をさせていただければと思います。

治療法は?

骨折のある骨性マレットの場合は、手術になることがあります。手術はピン固定です。体外にピンを出したまま、週に1〜2回消毒を行い、6週間ほどでピンを抜去する治療法と、ピンを皮下に埋めてしまう治療法があります。これは手術をする病院の方針によって異なります。どちらを選択しても治癒は確実に得られます。
骨折のない腱性マレットの場合は、装具で6週間ほど固定を行います。治療期間中の固定は、お風呂に入る時も外しません。そーっと外して曲げるのも禁止です。多くの場合、きちんと約束を守り固定ができれば、6週後には治癒が得られています。
つき指をしてしまったという方は一度受診をしてみてください。きちんとした診断と治療方針が固まれば、その後、安心して過ごせるかと思います。

シーネ固定について

シーネ固定は、基本的には骨折部の安定化を図り痛みを軽減する治療ですが、一つ重要な合併症がありますのでご留意ください。手足を固定し、動かさないことやケガをすると周辺の筋肉や脂肪組織が腫れることで血流のうっ滞をおこし、血栓を作ることがあります。血栓は、固定を除去してひとたび手足が動かせるようになると、血流に乗って重要臓器に詰まってしまうことがあり、脳梗塞や肺塞栓を起こすことがあります。大きな骨では、骨折部からの出血で貧血が進行し、もともと心臓や腎臓の悪い方は持病の悪化をきたすこともあります。患者さんの状態や体質に合わせて治療法を選択していくことが大切となります。